世界の果てで、呟いてみるひとり。

鳴原あきらの過去・現在・未来

気をつけて休み休みやってたつもりなんですけど。


夜になったらどっと疲れが出てきて悲しくなり。
いくら悲しんでいても幸せや必要なものが降ってくる訳ではないので、布団をかぶって少し休んでいたら、津原泰水「天使解体」*1をふっと思いだし。
この小説の主人公は神経症にかかって、杖をつかないと長時間歩けないような身体になっている。故郷に帰る時に、人目を気にして東京に杖を置いてきたんだけれど、結局うまく歩けない。一緒に歩く母親にみっともなくて申し訳ない気持ちを伝えると、

母は気丈に、「なにが恥ずかしいものか」と云った。

この簡潔な一文。
津原氏が身体を壊した時、「母がいい肉を買ってきて血のしたたるようなレアステーキを出してくれた」という話をきいたことがあります。生に近い方がすぐ血肉になって身体の回復がはやいから、といわれて食べると、みるみる神経がつながっていく気がした、と。「天使解体」はあくまで小説ですが、その母親像と重なって、これが羨ましい。それならば息子は、たとえ再びどん底に落ちようと生き延びられるだろう、と思う訳です。
そんなことを考えていたら、ちょっと浮上。
他にも津原氏には面白い呪文がありますが、その話は覚えていたらまた別の日に。

*1:集英社『綺譚集』収録。pdf版ももってます。