世界の果てで、呟いてみるひとり。

鳴原あきらの過去・現在・未来

空はもうすでに高く、秋のいろ。


気温は高いしムシムシしますが、すでに夏は盛りを過ぎた感じの暑さです。
風が涼しい。
秋の支度には早いけど、夏の服もそろそろ整理しはじめていいかな、という感じ。


先日、イベント帰りに、大崎駅で初めて「女性専用車両入り口」という表示を発見し、「ああ、これがそうなんだ」と思った訳です。
ラッシュ時と深夜だけそういう設定になっているらしいので、私が乗った時は普通の車両だったんですが。
それだけ痴漢の被害が多いってことなんだよな、と思うと、ちと暗い気持ちになったのでした。
あと、別な意味でも。


夏は女性が挑発的な格好をするから、肌が露出過多になるから、痴漢が誘われるんだよ、と怒る男性をみかけたりします。
ですが、「なら、貴方はまったく知りもしない過激なスタイルの若い女性を、実際に触ったことがありますか?」と訊いてみたい。
百パーセント、ないと思うよ。
痴漢のターゲットは、むしろ地味めな、おとなしそうな女性のはずです。痴漢というのは、「自分に反撃できなさそうな弱い存在に、淫らなことをして自分の力を誇示しようとする卑劣な犯罪行為*1」であって、自信たっぷりに肌を露出するパワフルなお姉ちゃんなんかには、まず手を出したりしません。
その証拠の一つとして、過去、私が痴漢行為にあった時に着ていた服装をあげてみましょう。


・ダサい(ガキっぽい安物の)ワンピース
・親のおさがりの古いスカート
・中学・高校の制服(紺サージの重たいジャンパースカート。膝下10〜15センチ)
・ものすごく地味な(おばさんくさい)スーツ


ほぼフォーマル系です。お洒落・露出から正反対の方向の。
時間帯はそれぞれ、早朝とかまっぴるま。夕方もまだ早い頃。
一番すごい場所は、自分の家の目の前でした。学校から帰ってきたとたん、へんなおじさんにスカートをひっぱられて、たたんだお札を見せられて*2、「500円あげるから触らせて」と言われた。門の前にたちふさがられているから、家に逃げこみたくても不可能で、「どうしたらいいんだ!」と慌てた。幸いその日、裏木戸に鍵がかかってなかったので助かった訳ですが、他にも家の近所で、ということはよくありました。むろん、寄り道なんかしてないよ。ぼんやりした娘が、おとなしそうな格好をしてるから狙われた、としか考えようがありません。
ちなみに私が痴漢に遭った話をすると、ほぼすべての男性が(いや女性もです)「信じられない。この世のどこにそんな物好きが?」という顔をします。ええ、本人だってそう思ってますよ。そういうご面相だし、色気のかけらもないスタイルだし、キャラクター的にもアレだしね*3
でもいるんだよ! しかも一人じゃないんだよ! セクハラなんてレベルじゃないことをされるんだよ! いつのまにそんなところに手が、状態なんだよ! 隙があるからいけない? 自分の家の前でも、つねに隙のない状態でいろってことだね?


夏だけ突出して性犯罪が増える、という統計にお目にかかったことがありません。それは洋の東西をといません(春にじゃっかん多いという統計は見たことがあります)。肌の露出や開放感が、性犯罪を誘発するのではない訳です。先にも書きましたが、痴漢行為は性的なものが目的というより、弱い者が弱そうな者へふるう暴力であって、卑怯きわまりない犯罪だからです。


殺意を抱いた経験が一度もないという人は、まずいないはずです(本気でそう言うのなら、その人は忘れっぽい・幸せな人です)。でも殺意を抱いたからといって、実際にその相手を殺して殺人犯になった、という人は、ほとんどいません。「そう思っても、絶対にしない」と「実際にした(繰り返した)」の差は、あまりに大きい。


だからね、「モラルある普通の男性は、女性専用電車にいきどおったり、痴漢の気持ちによりそってやる必要はないんですよ」と言いたい訳です。痴漢行為は「好きな相手/好みのタイプの人に触ってみたい」と思う気持ちと、全く別レベルの話です。彼らは犯罪者で、犯罪者はむしろ、健全な貴方の敵です。だって一部の不心得者のために、ひとからげにされて変なレッテルを貼られるの、嬉しくないですよね?


●追記:この文章は、「露出の多い服を着た女性は、絶対に痴漢に遭わない」と書いている訳ではありません。「この女はチョロイや」と判断されれば、どんな服装でも触られることはあるでしょう。また、この問いかけは、痴漢行為を「働かない」人に向けてのものであることを、再度強調しておきます。

*1:あくまで力の誇示ですから、小柄な、華奢な男性が男性からセクハラされる話はよく聞きますし、私は驚きません。

*2:500円札があった時代の話。

*3:二十歳の頃の私は、二言目には「ナリハラさんのヒロインは色気がない」と言われたものです。