世界の果てで、呟いてみるひとり。

鳴原あきらの過去・現在・未来

TIGER & BUNNY のラスト3話、よくわかりませんでした……


春からネットなどでオンエアされて話題になっていた某タイバニ。
前半までは、それなりに楽しくみてたんですが。
虎徹の頭が悪すぎだろうが、バーナビーの性格がいろいろ極端だろうが、それはそういうキャラとして、それなりにみられたんですが(バーナビーの場合は精神をいじられているから、不安定なのは無理ないのかもしれないし)。


実は23話からのマーベリックさんの行動がまったく理解できず、ほんとにポカーンとしてました。たぶん最終話には、なんらかの説明が入るだろうと思っていましたが、ぜんぜんフォローがなかった。あまりに唐突というか、余計なエピソードをいれて、ぜんぶ台なしになってるというか。物語の大前提が崩れてるぞっていう。


タイガー&バニー」というアニメは、シュテルンビルトという街が舞台で、その街では数十年前から、超能力者が発生しており、この街ではNEXTとよばれています。NEXTの発生率の高さから、彼ら用の学校まである状態です。その中で、優れた能力のある者が何人も選ばれ、HEROとして犯罪者をつかまえる仕事をしています。HEROにはそれぞれスポンサーがついていて、広告をしょって戦い、その逮捕劇は、ショーとして、HERO TVという特殊放送で流されています。シュテルンビルトはバットマンにおけるゴッサムシティよろしく、犯罪組織が暗躍する犯罪都市なのです。ただ、HEROの仕事はつかまえることだけです。犯罪者の収監や罪刑を決めるのは司法局があり、彼らは犯罪者を処刑することはありません。しかも、この街では死刑が存在していません(勝手な私刑は存在しています。しかも司法局の中に……)


主人公の一人、バーナビーは、四歳のクリスマスに、ロボット工学の権威である両親を殺されています。その時、犯人を一瞬みた記憶があり、その時みたヘビの形の入れ墨から、ウロボロスという犯罪組織であると断定。親の仇を探すため、ヒーローとしてたたかっています。孤児になった彼を二十年以上支え続け、ヒーローになる道をつけてくれたのは、両親の友人で、HERO TVの総元締めである、アルバート・マーベリックさん。バーナビーは彼を尊敬し、父とも仰いでいます。
これが、主役の前提です。


実はバーナビーの両親を殺したのは、マーベリックさんでした。
彼自身、人の記憶を操ることができる超能力者で(ただしなにかのきっかけで、その洗脳が一気にとけてしまう程度の能力)、NEXTがバケモノと差別されるのに耐えられず、ヒーローとして街を守ることでイメージアップをはかっていたわけです。しかし、そうしょっちゅう犯罪が起こることもないわけで、ウロボロスと手をくんで犯罪をおこし、やらせの逮捕劇をやっていたわけです。マッチポンプですね。
それがバーナビーの両親にバレ、警察に通報するというので、逆上したマーベリックさんは、とっさに二人を殺してしまった。そして、死んだ二人をみたバーナビーの記憶を能力で改竄し、別の犯罪者、ジェイクに罪を着せてしまいました。
これが、悪役の大前提です。


バーナビーの記憶は、何度もゆらぐのですが、当日のジェイクにアリバイがあり、彼が犯人でなかったことを知り、しかも彼のHERO上のパートナーである虎徹の行動がきっかけで、記憶を操作されていたことを自覚してしまいます。しかし、親ともたのむマーベリックさんが犯罪者とは疑えず、自分の疑念を知っているのは「虎徹さんだけです」というところまで、打ち明けてしまいます。
マーベリックさんによって、バーナビーは再び記憶をいじられ、彼の記憶に関わっているハウスキーパーさんは殺され、なおかつその殺人犯は虎徹である、という記憶操作が行われます。
なぜか、マーベリックさんは、第一線で活躍中の他のNEXTたちの記憶も操作します。虎徹はヒーローではない、殺人犯だという記憶をうえつけ、バーナビーや他のNEXTに虎徹を追い詰めさせます。
しかし、NEXTたちの記憶は、当然といえば当然ですが、戻ってしまいます。
するとマーベリックさんは、バーナビーの両親といっしょにロボット研究していた、ロトワングというマッド・サイエンティストでNEXT差別主義者が開発した、強力なアンドロイドを投入。「これからはロボの時代、NEXTは用済みなんだ」と、ヒーローたち全員を殺そうとします。
ヒーローたちは仲間技術者の協力もあって、最終的にロボに打ち勝ちます。役にたたなくなったロトワングは、マーベリックに蹴り落とされます。「残念だが、私もNEXTなのだよ」と。
絶体絶命になったマーベリックは、自分の口から情報がもれるのを恐れてか、自分で自分の記憶を消し、警察に捕まります。そして、護送される車の中で、司法局内にひそんでいた、私刑執行者に殺されます(ある意味これも、親の仇うちになっている)。
街に平和が戻りましたが「ウロボロスは終わらない」という言葉とともに、根本的な問題は解決されていないよ、という暗示で終わったわけなんですが。


マーベリックさんの行動、おかしすぎるだろう??


バーナビーは、真犯人はジェイクでないという事実を「虎徹さんしか知りません」といっています。
記憶操作だけで不安なので、事実を知った人間を殺すというなら、バーナビー、ハウスキーパーさん、虎徹の三人を殺せばいいだけです。
なのに、なぜ、自分の不安定な能力をもって、他のNEXTをまきこみますか?
ヒーローたちの逮捕劇の最中に、虎徹がぜんぶ真実をしゃべっちゃったら、どうするつもりだったのでしょうか? テレビで生中継されてるんですよ? それに彼らは、殺人犯であろうと、逮捕するだけで犯罪者を殺したりしないのですよ?
だいたい、いくらヒーローたちを全員洗脳したとしても、以前に虎徹を雇っていた会社の社長(ベンさん)など、彼がヒーローであって、殺人犯ではないってことを知っている人は、他にもいるわけです。全員洗脳できやしません。


いちばんおかしいのは、ロトワングなる人とくんで「ロボ最強」説を唱えたことです。
バーナビーの両親を殺してまでNEXTの地位向上をめざしてきたのに、なんでいきなり宗旨替えしてるんでしょうか? なんのために大がかりな組織をつくり、テレビ放送をバックアップしてきたのでしょう? 自分の犯罪を目撃しているバーナビーを、二十年以上手塩にかけて育ててきて、ヒーローとして活躍させてきたんでしょうか? ロボを使って殺すぐらいなら、最初から殺しておけばよかったはず。バレないように今まで細心の注意を払って、何度も洗脳してきてたんですよ? しかも他のヒーローたちも殺そうとしている。彼らが死んでしまったら、誰がシュテルンビルトを守るのでしょう。ロボが? 彼が己の手を汚してまで、生涯をかけてやってきた仕事の意味は、どこへいっちゃったんですか?


マーベリックさんは自分の死を覚悟していた可能性は高いです。
自分で自分の記憶を消してしまったのは、ウロボロスの命令なんだろうな、とも思います。
(まあ、きっかけで思い出せちゃう能力ですから、無駄っぽい気もしますが)
しかし、ロトワングに「私もNEXTなんだよ」とあえてカミングアウトしたということは、彼はNEXTの誇りを、最後の最後までもっていたということです。
だったらなぜ、こんなおおざっぱにすぎる、しかも大勢のヒーローが不審死する可能性のある、くだらないお芝居を繰り広げたのでしょうか?


あまりにポカーンとしすぎて、虎徹さんとバーナビーさんの熱い友情(いちおうバディ物という設定)とか、まったく頭に入ってきませんでした。
だって重要な敵役の設定が根底から崩れちゃってるってことは、話自体が崩れちゃってるってことですよ?


第二期もあるという話ですが、期待できないな……と思いました。


マイノリティであると自覚することは、マイノリティの誇りをもつということでもあります。その誇りを仕事としてきた人が、いきなり全否定する意味がわからない。犯罪者だって三分の理があります。それに、ヒーローは強ければいいなんて、そんな話は今までありませんでしたよ(むしろ、犯人逮捕にあまり役にたたなそうなヒーローでさえ、よく活躍していました)。マーベリックさんの信念を否定するような事件が、特におこったわけでもないですし。
ロボバンザイは、余計なエピソードであるか、説明不足すぎかのどちらかです。


どなたかマベさんの心境を説明できる方がいらしたら、教えてください……。