世界の果てで、呟いてみるひとり。

鳴原あきらの過去・現在・未来

島田潤一郎『あしたから出版社』を読んだのです

http://www.shobunsha.co.jp/?p=3174


『あしたから出版社』〈就職しないで生きるには21〉
島田潤一郎著 装丁:矢萩多聞 装画:ミロコマチコ
B6判並製 288頁
定価:本体1500円+税
978-4-7949-6851-7 C0095 〔2014年〕


〈就職しないで生きるには21〉シリーズ第4弾!!


吉祥寺のひとり出版社 夏葉社 の 5年間の歩み!!


設立から約5年――。一冊一冊こだわりぬいた本づくりで多くの読書人に支持されるひとり出版社は、どのように生まれ、歩んできたのか。編集未経験からの単身起業、ドタバタの本の編集と営業活動、忘れがたい人たちとの出会い……。いまに至るまでのエピソードと発見を、心地よい筆致でユーモラスにつづる。


【夏葉社とは?】
昭和51年生まれの島田潤一郎さんが営む、吉祥寺のひとり出版社。「何度も、読み返される本を」をスローガンに掲げ、長く絶版になっていた本や、かつて自費出版で刊行された幻の作品の復刊を中心に、これまで10冊以上の本を刊行してきた。近年は復刊以外に、『冬の本』『本屋図鑑』など、独自の視点で編集した本も手がけている。


〈書評掲載〉
日本経済新聞 7/23夕刊(「目利きが選ぶ今週の3冊」で批評家・陣野俊史さんが選書)
ビッグコミックスピリッツ 7/21号〈評者:宇田智子さん(那覇市「市場の古本屋ウララ」店主)〉


〈書籍紹介〉
サンデー毎日 8/31号(SUNDAY LIBRARY 著者インタビュー)
Actuer 9月号(ピース又吉さんの連載「憂鬱な夜を救ってくれる本といる」で紹介)
新文化 7/24号
アエラ 7/21号(紀伊國屋書店グランフロント大阪店の星真一さんがおすすめする一冊)
北海道新聞 7/13(『「ひとり出版社」奮闘』の記事)


◇島田潤一郎(しまだ・じゅんいちろう)
1976年、高知県生まれ。東京育ち。日本大学商学部会計学科卒業。アルバイトや派遣社員をしながら、ヨーロッパとアフリカを旅する。小説家を目指していたが挫折。2009年9月に33歳で夏葉社を起業。本書が初めての著書になる。


突然、大切な従兄をなくし、小説家になる夢も果たせないまま、年をとってしまった。
自分の好きな本を、従兄の両親に届けるような仕事が、できないだろうか――。


良い本です。
さすが、小説家志望だったの人の文章。
だてに、大学の小説コンクールで一位とってない。
非常に読みやすく、ひきこまれます。
途中に、別の媒体で書いたらしい文章が混ざっていて、そこだけ情報が他と重複しているので、一瞬「?」となりますが、時系列が順番どおりでなくても読めてしまうし、非常によくできたストーリーです。
「なくした時間を、なくした人を、とりもどすことは決してできないけれども、自分の思いを形にして届ける努力をしていたら、新たな人とのつながりが、こんなにも沢山できた」というのは、物語として完全な一つの形であり、実際の島田さんが自転車操業で、おそらく大卒で就職した若者の半分以下の生活費でやりくりしているという事実よりも、美しいストーリーの方にほれぼれしてしまうはず。
「就職しないで生きるには」というタイトルを考えると「いや、一人出版社だって自営業だって、就職には違いないじゃん。最初の本でいきなり、和田誠に絵と装丁やってもらうとか、ありえないスペックの人じゃん」っていいたくなったりもしますが。


西荻ブックマーク、古書ビビビ、空犬さん(編集者)、町には本屋さんが必要です会議、晶文社が、この島田さんの本の中でつながって、「なるほどなあ、そういうネットワークなんだなー」と腑に落ちることしきり。皆さん、心の底から本を愛していて、良い本を世に出すために奔走して、良い書店や環境をつくろうと頑張っているんだな、と。


反対に、こういう動きをまとめて発信してる人って、いないのかな、という疑問も、わいてきたりもしたんですが。
ブログひとつこしらえて「こういうのやってますよ、こういううねりがありますよ」ってリンクして。
総花的になってしまうかもしれないけど、ある程度中心に居る人が、まとめてみてもいいんじゃないでしょうか……みなさん、そんな余裕は、ないのか。


以前、空犬さんの「beco cafe」のイベントに、三度ほどお邪魔して思ったんですが。
ここで話されてる内容は、なんで閉じてないといけないんだろうか、もし本当に内輪の話なら、外部の人にきかせるべきじゃないはずだし、外部の人がそれを持ち帰っても断片的な知識なので、他の人に正確に伝えることもできないし、と思ったんですよね。
晶文社の話も取次さんの話も面白かったのに、すごくもったいない。


知ってる人だけ知ってるからこそ価値のあるものもあるんですが、ウェブってそういうものの良さを口コミ的にひろげていくこともできる媒体なんですよね。実際、夏葉社さんの本も、ツイッターで広まっていった部分もあるらしいですし。


どうなんでしょ。