世界の果てで、呟いてみるひとり。

鳴原あきらの過去・現在・未来

書肆盛林堂さんの本にハズレなしとはいえ。

『険奇探偵小説 ホシナ大探偵―押川春浪 ホームズ翻案コレクション―』



http://seirindousyobou.cart.fc2.com/ca1/70/p-r-s/


やっと読み終えました。
結論から言うと、これは「買い」で、正解です。


1)他ではまず読めない「武侠探偵小説 大那翁の金冠」が入っている。


2)解説を、押川春浪研究の第一人者・横田順彌、日本有数のシャーロキアン・北原尚彦が書いていること。


3)なにより押川春浪が面白い。


前にも書きましたが、表題作の「険奇探偵小説 ホシナ大探偵」は「レディ・フランシス・カーファクスの失踪」の、割と忠実な翻訳で、日本が舞台で登場人物が日本人になっているにしろ、「トルコ風呂へ行ってきたね?」が「上方湯に入ってきたね?」になっているぐらいで、原作を知っている人にはそこまで目新しいものではないかもしれません(面白いですが)。
後半の、ナポレオンの金冠は、ホームズの有名な初期短編2つから、展開のアイデアを借りているものの、いかにも押川春浪らしい物語で、これはオリジナルとして読んでもいいかと思います。再録されなかったのは翻案ともオリジナルともつかない話だからかもしれませんが、これはこれで、大変面白いです。アル中でヨレヨレになっていた頃に書いた物とは思われません。初押川春浪がこれでもいいかも。普通は『海底軍艦』かと思いますが(宇宙戦艦ヤマトの元ネタといわれている、空を飛んでしまう軍艦の話ですよ)。


横田順彌・北原尚彦ペアの解説は、予想通りというか、予想以上に充実したもので、資料的な価値があると思います。ただし、一カ所誤植があるようです。

北原尚彦『S・ホームズの蒐集』発売中 @naohikoKITAHARA  3月24日


【訂正】『険奇探偵小説 ホシナ大探偵』(盛林堂ミステリアス文庫)の編者解説(143頁)で、元のホシナ大探偵の発行が「大学書院」とありますが、正しくは「本郷書院」です。155頁の底本表記が正しいです。お詫びして訂正致します。


これから購入する方には訂正紙が入るのかしら……。


ちなみに横田順彌氏は、一読してすぐに気づいたそうです。
探していた本ですから、どこから出ていたか気にかけていたんでしょうね。


なんにせよ、ホームズ、もしくは活劇系が好きな方には、安心してオススメします。
新仮名に改められているので、大変読みやすいです。
大正時代の小説とは思えませんよ。