世界の果てで、呟いてみるひとり。

鳴原あきらの過去・現在・未来

5月の本をまだ読み終えていない


開けてない袋とか箱が増えすぎてきました。キャパオーバー。


秋山真琴さんが、幻視コレクション最高傑作、と自負している『幻視コレクション 語り継がれる物語の前夜』を、読みました。




「魔女を火あぶりにしないために」川獺右端 


一話目。面白かったです。ハンスが出てきた瞬間に「あ、これはいい話だ」と思わず呟いてしまったぐらい、鉄板です。展開も結末も鉄板です。この話のためにこの本を買ってもよいと思います。もし弱点があるとすれば、イントロ、親方のキャラがちょっと弱く感じられること。それから、タイトル……まったく題名どおりの話ですが、おさまりが悪いというか。フックが弱いというか。それ以外は不満を感じませんでした。


「私のマキナ」猿川西瓜 


二話目。ここにしか入れようがなかったと思いますが、猿川さんは割くってると思います。こういう話を鉄板歴史物で挟んだら弱く見えてしまうに決まっているのです。展開がじゃっかん重たいのと、あと、一番いけないのは、塔をのぼるシーンがよくイメージできないという…… ヒロインのつらさはわかるのですが、それより作者が力んでしまっている感じ。挿絵があったら違うのかもしれません。結末は良いと思います。



「鳳翔太白山祈雨縁起」添田健一 


三話目。添田さんはずっと中国文学を守備範囲として書いてきた人なので、完全に自分のジャンルで勝負をかけてきました。私はあまり詳しくないので、小ネタがわかってないと思いますが、キウイフルーツは中国原産だネタぐらいはわかります(笑)
詳しくない人間は、いきなり「鳳翔は兵站地」と書かれると「え、そんな説明あったっけ」と思ったりもするわけで。中盤は特に、添田さんらしい筆の冴えがあって大変よいのですが、展開は、じゃっかん弱いかも。『墨妖』の方が好きですね。



「Wish You Were Here」 空木春宵 


四話目。美しいSFです。過去の作品を踏まえつつ、現在のガジェットも織り交ぜつつ、読ませる作品です。いかにもありそうな話でありつつ、古典の焼き直しと思わせないバランス感覚はさすが。ただ、読んでいて「空木さん、ずるいなー」と呟いてはいました。何しろ、この話だけで、この文庫のほぼ半分近くのページを埋めているからです。その枚数があれば、イメージを重ねていけるよね、と思ってしまう。空木さんのせいでも秋山さんのせいでもない話ではあるのでしょうが、猿川さんが割くってる感が半端ないので、この長さはバランスを欠く感じがします。あと、ここまで重ねてきたものに対しての結末がこれなのは、やや物足りないかも。



そんなわけで、各作品のレベルが高くて、読んで面白い1冊だと思うのですが、トータルバランスを考えると、『幻コレ緑』に軍配をあげてもいいかなー、と思います。
読み終えた時に、何かお土産を読者にもたせられるのが、良い小説だと私は思っているので、そういう意味では、こっちをオススメします(5分の1、手前みそですけども)




●追記:ちなみに、この『幻視コレクション』収録の、水池さんと渡邊さんの作品は、創元コレクションに収録される?予定だそうです。す、すごい……!



えーと。
こ、腰の方は相変わらずで……しばらく整体に通わないとだめそうです。