世界の果てで、呟いてみるひとり。

鳴原あきらの過去・現在・未来

フランスの児童文学で、なにしろ傑作童話ですからね。


『わたしの世界一ひどいパパ ほか二編』 (世界傑作童話シリーズ)




表題作は、とんでもないお父さんをもった娘の物語で、文字通りほんとうにひどいパパなんだけども、だからといって娘はパパを恨むでもなく、という物語なんですが。


ほか二編は、ゲイの物語です(ちょっと忘れてたので、前に別のところで書いた感想を引っ張り出してきました)。


「弟からの手紙」


クリストフは、一家のたのもしい長男だったが、男友達のフロリアンとキスしているところを、一番下の妹が見つけて告げ口。両親はパニック状態になってクリストフを勘当。下の二人の子を連れて海辺の家にバカンスへ行きます。弟は、旅行へいった兄のクリストフに、最悪のバカンスを知らせる手紙を書き続けて……という話。
ひとことでいうと、ゲイバンザイ話で、そういうのがダメな人は、たぶん読めないでしょうが、弟がものすごくリベラルで、痛快です。
問題解決処理能力のない両親は、結局長男とその恋人に助けられちゃうので……!



「ぼくと先生と先生の息子」


小学校に入学した日、主人公の少年は、担任の美しい先生、マダム・ピケに恋をする。その純粋な想いは幼い恋心どころでなく、彼をすっかり優等生にしてしまう。そのため、先生が目の前から消えた時、彼はあっという間に転落していく。ところがある日、先生は、息子を連れて学校へ戻ってくる。そして、次に主人公が恋をしたのは……物語のラスト、来ないと知りつつ、主人公が待っている、見舞客は……。
抑制のきいた文章で、恋愛心理がすごく丁寧に描かれていてドラマチック。ピケ先生に一目惚れした最初の数章は、たぶん誰が読んでも「わかるわかる!」になると思うのですが、後半の激情も見逃せません。
ほんとうに、物語の見事なお手本みたいな短編集です。福音館書店、ありがとう!



……で、なんで、何年も前に読んだ本の感想をわざわざひっぱりだしてきたかというと。


わりと近年の児童文学には、ゲイ少年が、重要な役柄でけっこう出てくるんですよ。


なのに、そういう流れを無視して「子どもが読む場所にはふさわしくないから」「ほのぼのしてないから」って撤去しちゃおうとする人がいる。


そういうの「なんかモヤモヤするな」って思ってる人、けっこういるはずなんですよ。


だって、「弟からの手紙」は、ほのぼのだよ? 痛快だよ? むしろこれは、子どもに読んで欲しい話だと思いますよ?
それから、「ぼくと先生と先生の息子」も、そういう激情を知っている子には、ひとつの救いになるかもしれない話なので、これもやっぱり思春期の子に読んで欲しい。家庭の問題も上手く織り込まれていて、優れた短編なので。


……というわけで、ツイッターでちょっと紹介してみたら、数時間のうちに、知らない人からのRTやいいねが、結構つきました。


そうだよね! やったー!


悲劇的なキャラクターとして描かれがちなのはわかるんですけど、主体的に活躍する話、痛快な話が、あってもいいんじゃないのかな、って思いませんか?
そして当事者でない子も、なるほど、と思って読めるんじゃないかな、と思うんですよ。


もちろん大人が読んでも面白いんですけど、ね!


私の説明じゃ「よくわからん」という方は、この素晴らしい紹介文をどうぞ。
http://d.hatena.ne.jp/yamada5/20101223




あっ。
拍手ありがとうございました!