世界の果てで、呟いてみるひとり。

鳴原あきらの過去・現在・未来

津原泰水最新刊


『ブラバン』
その書名のとおり、吹奏楽部を舞台にした青春群像小説というふれこみで、何ヶ月も前から楽しみにしていたのです。
しかも津原氏本人が、この本にちなんだ楽曲を演奏するライブがあり、予約した参加者には事前に頒布してくれる、という素敵な企画がありまして。


しかし、届いたのはライブ前日の、仕事に行く直前……。
四百ページ近い立派なハードカバーなのに。
ゆっくり読みたいのに。


津原節は健在ですが、導入部から引き込まれる出来です。
そう、昔の黒電話ってこういうこと出来ましたよね。
ああ、じっくり読みたい!


管楽器と弦楽器をかじったことがあったため、おそれげもなく十代を相手に指揮棒をふっていた数年があります。
大勢の人の前に立つのが嫌いで、特に視線がすうっと集中してくる瞬間は、「うわ、なんだ、みんな私の話をきいてるよ、気持ち悪い、信じるなよ!」と大変失礼なことを思う人間ですので*1、指揮棒をもっていた時期もロクなことは言わなかったんですが、「自分のどこにこんな言葉が眠っていたんだ?」というような台詞が飛び出して、百名以上の音がふっと一つにまとまった瞬間は、何度か経験しています。


ある意味あの頃が、一番真面目に音楽をやってたのかもしれません。

*1:どんなカリスマがどんな面白い話をしたところで、ある程度以上の規模の集団だったら、そっぽむいたり、ぼーっとしたりする人間が、一人や二人まざっているのが普通。もちろん、数人と座談、だったら「みんな聞いててよ?」と私も思いますよ。しかし、四十人以上の人間を相手にした場合、一度で全員に話がゆきとどくことは、まずない、と思っています。でもだからといって「みんな聞いてんじゃねえよ」なんて腹の底で思って話されたら、聞く人はいい面の皮……それはわかってるんですよ……だけど生理的なものなんだよ……。