世界の果てで、呟いてみるひとり。

鳴原あきらの過去・現在・未来

予想以上に面白いです。

『失われたミステリ史 増補版 附 S・A・ドゥーセ作品集』
著 者:加瀬義雄
解 説:森英俊


http://seirindousyobou.cart.fc2.com/ca1/12/


5/11の日記でもチラッと書きましたが、6月8日にやっと入手しまして、チマチマ読み進めております。
ミステリが好きな人(ある程度の素養のある人)限定かもしれませんが、これは本当に面白いです。
資料的に貴重な本というだけでなく、加瀬さんの語り口も面白く、時々、声に出して笑っています。


どんな本なのかは、「翻訳ミステリー大賞シンジケート」のサイトの記事紹介が詳しいです。

2014-05-22
第15回 インターナショナル・ダガー賞(執筆者:松川良宏)
http://d.hatena.ne.jp/honyakumystery/20140522/1400714936

本題に入る前に今回はまず、非英語圏ミステリーに興味のある人にぜひ読んでもらいたい書籍を紹介する。今月24日に盛林堂ミステリアス文庫の1冊として限定400部で刊行される加瀬義雄氏の『失われたミステリ史』である。これは昨年逝去された加瀬義雄氏がミステリー研究同人誌『ROM』で2004年から2012年まで全10回にわたって連載したものをまとめたもの。「失われたミステリ史」と題されたこの連載は、スウェーデンノルウェー、イタリアの古典ミステリーをスウェーデン語やイタリア語の原書で読んで(あるいはドイツ語訳や英訳などで読んで)紹介するという、他の誰にも真似できない空前絶後のものだった。加瀬氏は作品をレビューするだけでなく関連文献を渉猟して、日本ではほとんど知られていない北欧やイタリアのミステリー史を詳細に描き出している。また分量的にはメインは北欧とイタリアだが、ドイツ語圏やフランス語圏の古典ミステリーのレビューもある。
 

 『失われたミステリ史』でレビューされている作家は、たとえば戦前のスウェーデンのフランク・ヘラー(Frank Heller)、ユリウス・レギス(Julius Regis)、ロビンスン・ウィルキンス(Robinson Wilkins)、戦後のスウェーデンのハンス・クリステール・レンブロム(Hans-Krister Rönblom)、ヤーン・エクストレム(Jan Ekström)、マリア・ラング(Maria Lang)、ノルウェーのスヴェン・エルヴェスタ(Sven Elvestad)、ベルンハルト・ボルゲ(Bernhard Borge)、イタリアのエツィオ・デリコ(Ezio D'Errico)、アウグスト・デ・アンジェリス(Augusto De Angelis)、アレッサンドロ・ヴァラルド(Alessandro Varaldo)、オーストリアのアオグステ・グローナー(Auguste Groner)、ドイツのパウル・ローゼンハイン(Paul Rosenhayn)、ベルギーのスタニスラス=アンドレ・ステーマン(Stanislas-André Steeman)ら、邦訳が一切ないか、あるいはあるにしても非常に手に入りにくい作家ばかりである。


 たとえば北欧ミステリーが好きな人はその源流を知るという意味で、また英米の古典ミステリーの愛好者は同時代の多様なミステリーを知るという意味で、ぜひともこの書籍を手にとっていただきたい。


 『失われたミステリ史』は2008年に一度、連載の途中までをまとめたものが同人出版されているが、今回のは連載のすべてをまとめた「増補・完全版」だそうである。また、加瀬義雄氏が翻訳したスウェーデンのS・A・ドゥーゼの短編も4編収録されるそうだ。ぜひともお見逃しなく!


店舗での販売の様子などは、以下の写真で。 


http://d.hatena.ne.jp/seirindou_syobou/20140522/1400751921


加瀬さんは、クラシックミステリ(を含む昔の小説)の面白さと、現在の文芸が本質的に見失っていることを何度も指摘しているんですが、その主張がすーっと入ってくるのです。
私の基本的な主張や立場は、加瀬さんとはだいぶ違うのですが、それでも「うんうん」とうなずける、なんというか、説得力があるのです。


知らない作家のことや、マイナー言語の国の作家のことなんか、読んでもしょうがないじゃん、と思う方も、もちろん、いらっしゃると思うのですが、ふだん私たちが意識しないこと、排除してきたことを学びなおすという意味でも、良書だと思います。


残部もわずかになってきているらしいので、興味をもたれた方は、ぜひ……!