世界の果てで、呟いてみるひとり。

鳴原あきらの過去・現在・未来

これもまた、友情のひとつの形。


『女人 吉屋信子』、読み終えました。面白かった!
最後に作者の吉武さんが本人に会って話をしたくだりも、貴重な証言だなと。


で、その266ページ。
「黒薔薇」に「菊池寛氏の作品に就きて或る傾向を難ず」を吉屋信子が載せた時に、菊池寛が書いてきた手紙の末尾。

あなたの作品は二、三よんで、女性を描き出す手腕に敬服してゐます。そのことは、徳田さんなどにも一二度云つたつもりです。
黒薔薇御掲載の「或る愚ものの話」*1は、二月分丈よみましたが、たいへん面白く感じました。やつぱり、男性の描く女性に比し、ほんたうのやはらか味が感ぜられます。同性愛についてのお考へも至極同感です。御如才もないでせうが、この手紙もあまり、人にはお見せにならないやうに。


二月十四日*2   菊池寛
吉屋信子

近況にも書きましたが。
お金目当て(今の言葉でいえば「逆玉」?)で結婚するまで男一筋、男の恋人をかばって、一高(今の東大)を退学した、筋金入りの♂♂だった菊池寛から。
出会ってから最後まで門馬千代との関係を続け、徹頭徹尾♀♀だった吉屋信子への手紙だと思うと。
「あまり、人にはお見せにならないやうに」なんだろうなあ。
こういう友情の形、それはそれで美しい、と思うのですが。


田辺聖子が書いた伝記も読み始めました。あと、駒尺さんの本が見つからないんだ……ぜったい面白いと思うんだけどな……。

*1:正しくは「或る愚しき者の話」。後に単行本にする時に『黒薔薇』の名で出した長編。

*2:大正十四年二月十四日