世界の果てで、呟いてみるひとり。

鳴原あきらの過去・現在・未来

というわけで、第十七回「文学フリマ」のこと


さて、当日のスペースのシミュレーションをし、見本誌を含む在庫を事前搬入して、満を持して参加するはずだった、今年最後のイベントですが、10月中旬から悪い風邪をひいて、治ってはひきなおしを繰り返していたため(若くもないのに無茶するからですよ)、新刊も思ったような形で作成できず、それでも前日が日曜だったため、来場予定の方のことも考えて、ギリギリまで準備をしておりました。
それもようやくメドがつき、いつもの起床時間に目覚ましをかけて眠りました。電車の時間を調べると、その時間で、サークル入場に余裕をもって入れると考えたからです。
明け方に一度、目が覚めて「あと1時間ぐらい寝られるな」と思って寝なおしたのですが、「あれ。なんで目覚ましが鳴らないんだろう。1時間は寝たよな」と思って、時計をみて、びっくり。
起床するはずだった時間を、1時間半近く過ぎていたのです。
目覚ましは、鳴らなかったわけではありません。
無意識にとめたわけでもありません。
目覚ましをかける時に、私が表示を見誤って、12時間かけちがえていたのです。
いつもの起床時間のために「起きられるだろう」と考えてしまった甘さ、よく確認しなかったゆえの、ミスでした……。


電車の接続があまりよくない時間帯で、最寄り駅にいて、今すぐ電車にとびのれたとしても、考えていた到着時間より三十分以上遅れることがわかっていました。
そして、今すぐ飛び乗れるわけもないわけで、つまりこの時点で遅刻は確定しましたので、とにかく着替えてご飯を味噌汁でかっこみ、弁当用のパンを鞄に突っ込んで出発。
「おつかい頼まれてるけど買いそびれないだろうか」「どうせ一般入場で入るなら、あそこのブースは早めにいかなきゃだめだろうから、先にいっちゃうか」「設営に20分ぐらいかかるとして見本誌はいつ提出しにいこう、間に合うかな」と様々な思考が頭を駆け巡るわけですが、いつもより余計に寝たこともあって、あわてている割には冷静なことを考えているようです。電車の中でウトウトしてドアが閉まる寸前に飛び出したりしている有様でしたが(結局寝不足で遅刻してるんじゃないの?)、いちいち切符を買わなくてすむSuicaのありがたみを初めて感じながら、とにかく東京モノレールまでたどり着きました。
休日で、雨が降ったり止んだりの曇天の空の下を走るモノレールは、いつになく風情ある景色を展開していました。多くの人と反対の方向から乗っていること、しかもすでにサークル参加の人は会場にいっているわけで、電車内も閑散としています。カメラをもってきていたら、整備場の飛行機の写真を撮りまくりたいぐらいでした。


そんなこんなで、会場に到着したのは、10時55分。
サークル入場は5分前にしめきられており、一般待機列の最後に並んで、当日地図を確認します。
11時になり、お隣で行われているイベントの列が動き出すと、文学フリマの列も動き出します。時間があったら、そこのローソンの黄金チキンを買って食べようか、などとぼんやり考えながら、入場します。


頼まれていた買い物や自分が買おうとしていたサークル、ご挨拶しなければならないスペースを急ぎ回りましたが、当日の目玉だった「名古屋大学SF研」(http://d.hatena.ne.jp/MSF/)は、すでに島を半分回って壁に到達するほどの長蛇の列で、お目当ての「殊能将之氏」本はもう数冊しか残っていない雰囲気。あきらめて自分のスペースに入り、まずはお隣のスペースの方に10分ほどの遅刻をお詫びし(設営でしばらく、バタバタするからです)、在庫をひきとって見本誌提出(提出期限に間に合いました)、チラシ置き場にチラシを置き、スペースに戻ると今回のウリである『キャロル』改訂版とポップを広げて設営に入りました。
まだ『キャロル』しか出しておらず、あきらかに設営中であるにも拘わらず、買っていかれた方がお二人もいらっしゃいました。おそらくお待たせしていたのだと思います。朝一番におこしくださってありがたく、そしてあらためて「こんな日に少しでも遅刻するなんて」という、後悔の念がわいてきます。
とにもかくにも設営を終えて、用意してきた評論用のポップを飾り、もう一枚は敷き布に貼り付けて、在庫と新刊を並べて販売開始です。
今日は、タトホンで知り合った方や昔の知人が来ることがあらかじめわかっていたので、お客さんが少なくても退屈することはないなと思いつつ、買った本を少しずつ読みます。
両隣は複数のサークル参加者さんがいらっしゃり、どちらも人気サークルさんなので、買い手さんが私のスペースへはみだしてくること、しきりです。文学フリマの主催、望月さんが「声をかけあってはみださないようにしましょう」とサークル案内にもカタログにも明記しているのに、そんな注意は誰も読んでいないようです。もう、遅刻のせいで、恥もなにも感じない状態になっている私は、おばさんモード丸出しで、「それはお隣のスペースの本ですので、うちの前で読まないようお願いします」といつもより頻繁に声をかけます。お隣の方々も、気がつくと声をかけてくれるようになりまして、結果として声を出し続けてよかったです。
弱小サークルだからこそ、前をふさがれると困るのです。
ところで、文学フリマに限らず、通路のど真ん中で立ち止まってサークルと関係ない立ち話を延々とするのは、サークルに対する営業妨害であるばかりでなく、一般参加者の方にとっても、邪魔で危険なので、できるだけ隅っこでお願いいたします。


ところで、今回、雨模様でありながら、来場者数を多く感じました。
人波が途切れないので、トイレにたつのも何か食べるのもためらわれ、買いそびれたものなどもありますし、途中で空腹にもなりますし(差し入れはみんな、ありがたく頂戴いたしました。本の差し入れもありがたかったです。Hさんはやっぱり天才だった)、薬なども飲みたかったので、それなりにちょこちょこと出入りしましたが、一階の小説サークルさんたちにご挨拶に行くことができませんでした。
ポップのせいなのか、事前に北原尚彦さん他、宣伝してくださった方がいらしたせいか、『キャロル』を手にとってくださる方も少なくありません。
『キャロル』を委託販売して下さっていた、盛林堂書房の小野さんなどもお越しくださり、「昨日で委託分が完売したので、もし追加があれば」などと、優しいお声をかけてくださいました。本当はこちらからご挨拶にいかなければならなかったというのに、ありがたい限りでした。
ご自分がサークル参加されている忙しい合間を縫ってきてくださった皆々様も、誠にありがとうございました。
先週末から耳の調子が悪く、予想していたお客様が来られても、お名前をききとれず妙な受け答えになってしまったりもして、その節はたいへん失礼いたしました。ご寛恕くださいませ(某所の編集者様など、せっかく名乗ってくださったというのに、「あ、あの人は!」と後で気がつく、この間抜けぶり……)。
こんな奴ですが、今後ともよろしくお願い申し上げます。


そんなわけで、閉会ギリギリまで本をお手にとっていただけましたし、『キャロル』と『ポールの場合』は大健闘、新刊その他もよく動きまして、本人がどうしようもない状態であったにも拘わらず、イベントとしては、良い感じでしめられました。
これもひとえに、ご来場の皆様のおかげです。
心から感謝いたします。
来年もよろしくお願いいたします!


主催の望月さんが、閉場時に「外はどしゃぶりですので、雨やどりもかねて撤収のお手伝いをおねがいします」とアナウンスされた時、「ええーっ!」と声があがり、「ブーイングが聞こえましたが、この雨は僕のせいではないです」と付け加えたのも、ほほえましかったです(主催者さんこそ、一番、雨に降られたくないですよね)。


http://d.hatena.ne.jp/jugoya/20131104

http://text-revolutions.com/review/?p=534